6時半から映画上映。
予告編など一切なし、いきなり始まりました。
郊外の道を走り抜ける乗合馬車、アンナ・ホルツ(ダイアン・クルーガー)が揺られている。
風景と人々が行過ぎてゆく中、アンナはベートーヴェンの「大フーガ」の旋律に包まれている。
彼女が向かったのは巨匠の死の床だった。
というのが冒頭でした。
そして物語は進んでいきますが、
オフィシャルサイト にあらすじが詳しく載っており、それを参照いただいたほうがよろしいかと思います。
印象的だったのはカールスバートの森にたたずむベートーヴェン。
集音型の補聴器(ラッパみたいな形)で森の音を聞いたりしているのですが、やがてじっと座り込み、彼自身の内部の音を聞いているようでした。
彼は外界の音を失った変わりに、頭の中を音楽で満たし、それが常に聞こえていたようです。
それから、第9初演。
舞台裏で怯えと失意を見せるベートーヴェン。
アンナの手を借りて指揮を無事にやり終えることができるのですが、そのときの二人の交感というものが、映像と音楽を通して伝わってきます。
それで 「歓喜によす」 のあの歌ですから。
見ているうちに感極まってきます。
その後、ベートーヴェンは度を過ぎたコドモっぽさでアンナを失望させますが和解して「大フーガ」の作曲に取り掛かり。
初演は散々、しかし病に倒れたベートーヴェンの音楽への情熱は衰えません。
終わりは不意に訪れます。
「あっけない終わり方だったねー」
という声が近くの客席から聞こえましたが、愁嘆場がなく、私は映画の終わり方としてはよかったと思います。
アニエスカ・ホランド監督らしい映画でした。
やや甘い焦点の映像で、トーンが暗め。
そしてエド様の表情の豊かさをたっぷり引き出してくれていました。
トロントで 気の抜けたような演技 と酷評を受けたダイアン・クルーガーでしたが、ベートーヴェン並みの勢いの演技だったら、彼のエキセントリックさが際立たなかったのでは。
私は彼女もよかったと思います。
そして、 エド様オスカー説 については。
主演男優賞ノミネートの可能性は十分あり。と思いました。
ほかと比較ができないので、それ以上のことは予想できませんが。
帰り道、頭の中でずっと合唱が響き渡っていました。
公開が待ち遠しい映画です。
パンフレットも欲しいし。
サントラCDの発売も、実に楽しみです。